東京国税局から課税処分を受けた免税店運営会社が、融資を受けていたみずほ、三井住友の両銀行に対して自社ビルの「根抵当権」を設定させていたのは国税の徴収権を阻害するものだとして、国が両行を相手取り、根抵当権の登記を抹消するよう求める訴訟を東京地裁に起こしていたことがわかった。
訴状によると、東京国税局は2017年6月、免税店運営会社の宝田無線電機(東京)に対し約105億円の追徴課税を行った。同社は免税品の仕入れにかかったとする約88億円の消費税を還付申告していたが、同国税局は申告分の多くは不正と認定。約78億円の消費税の還付は認められず、重加算税など約27億円の納付を命じる内容だった。
一方、みずほ、三井住友の両行は17年3月までに、同社が見込んでいた還付金を担保として計50億円の融資を実行。還付金が50億円に満たなければJR秋葉原駅前にある同社本社ビルなどに根抵当権を設定する条項も追加し、申告通り還付されないことが決まった課税処分当日に登記した。
国税徴収法の規定では、課税処分日以前に抵当権などが登記されている不動産を売却する場合、抵当権者が国税の徴収より優先する。同国税局は同年9月に本社ビルや関連物件を差し押さえたが、別の金融機関の取り分を除くと、売却による徴収見込み額は両行の登記によって約7億6千万円から7億円以上減り、約3400万円になったという。
同国税局は、根抵当権設定の契約は、国税側が十分に徴収できなくなることを知りながら財産を減少させた「詐害行為」にあたると主張。昨年6月に両行を提訴した。関係者によると、両行は「正当な債権保全措置だ」などと反論しているという。両行は取材に、「係争中につきコメントできない」としている。(中野浩至)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル